「川崎病について」
小児科医師 勝又庸行
―川崎病とは。
全身の血管に炎症(血管炎)が起こる病気で、0~4歳の乳幼児が多くかかります。特に1歳前後の子供に多いですが、頻度は低いものの年長児や成人でもかかります。1967年に川崎富作先生が発見したことから、この名前がつきました。ウイルスや細菌などによる感染症などが疑われていますが、いまだにその原因は不明です。
患者数は年々増加していて、全国調査によると、2010年の患者数は1万2755人で、0-4歳の人口当たりの発生数は過去最高となりました。山梨県内で川崎病と診断される患者は年間80~100人程度です。
―どんな症状が現れますか。
―という6つの「主要症状」のうち5つ以上当てはまる場合に川崎病と診断されます。普通は一度に症状は揃わず、出揃うまでに3~5日かかることが多いです。また、BCGの跡が赤く腫れることもあります。
―受診のタイミングは。
川崎病はできるだけ早期に診断し、治療を行い、血管炎を抑えることが大切です。川崎病で一番問題になるのは、心臓の筋肉に栄養や酸素を送り込んでいる冠動脈に血管炎が起きて瘤(こぶ)ができる冠動脈瘤(りゅう)という合併症です。冠動脈瘤は熱が続くほどできやすいといわれ、10日以上熱が続くとその発生率が高まるとされています。冠動脈瘤ができると血栓という血のかたまりができやすくなり、重症の場合には心筋梗塞を起こすこともあります。症状が麻疹(はしか)や溶連菌感染症に似ていることもあるためご自身で判断すると診断が遅れることがあります。合併症をできるだけ防ぐためにも早期に受診することをお勧めします。
―治療法は。
入院して治療を行います。まだ全国的に統一した治療法が確立されておらず、地域や病院などによって治療は異なることがあります。しかし、血が固まらないようにする「アスピリン療法」と全身の血管炎を抑えて冠動脈瘤などを予防する「免疫グロブリン療法」を行うのが主流となっています。重症度によって両方を同時に使う場合もあれば、どちらかひとつを使う場合もあります。
―山梨での治療は。
山梨では山梨大学が中心となって各入院施設の先生方と相談して統一した治療方針を決めています。そのため、どの病院に入院しても同じ治療を受けることができます。山梨では、アスピリン療法と免疫グロブリン療法を同時に行い、2日経過しても熱が下がらない場合には免疫グロブリン療法を追加します。さらに2日経過しても症状が改善しない場合には大学病院に転院してもらい、状況に応じて血漿(けっしょう)交換療法か抗サイトカイン療法という追加治療を行います。
通常は熱が下がってから1週間~10日ほどで退院できます。1カ月程度で回復し、心臓に合併症がなければ日常生活に戻ることが可能です。
―冠動脈瘤ができてしまった場合は。
冠動脈の状態を見るための心臓のエコー検査を定期的に行います。冠動脈瘤ができてしまうと、血栓ができやすくなるため、血栓を予防するためにワーファリンという薬を飲みます。太さが8ミリ以上の巨大瘤の場合は、一生飲み続けなければなりませんが、小さい瘤は自然に良くなり薬を中止できることもあります。最近は川崎病と診断される時期が早くなったこと、治療が強化されてきたことから冠動脈瘤ができる頻度は非常に減って、1ヵ月後に冠動脈瘤が残るのは川崎病患者の3%で、巨大瘤は0.2%程度になりました。
また入院中に瘤ができなくても、経過観察のために3~4年は定期的に診察と検査を受ける必要があります。