熱中症についてこのページを印刷する - 熱中症について

2014年8月21日掲載

  今年も暑い夏を迎え、日々健康に留意してお過ごしの皆様にとって、最も気になることの一つが熱中症ではないかと思います。もうだいたいのことはご存知と思いますが、簡単に熱中症について、あらましと注意点をお話しします。
 
 熱中症とは、暑い環境で生じる障害の総称で、体の中と外の"あつさ"によって引き起こされる、様々な体の不調であり、専門的には、「暑熱環境下にさらされる、あるいは運動などによって体の中でたくさんの熱を作るような条件下にあった者が発症し、体温を維持するための生理的な反応より生じた失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態」とされています。(熱中症は、読んで字のとおり、「熱に中(あた)る」という意味をもっています)
 
 人は、生命を維持し生活していくために各種の生体反応を営み、そのような代謝や酵素の働きの最適な条件である 35~37℃の狭い範囲に体の温度を調節している恒温動物です。私たちの体では呼吸、消化、吸収、代謝、運動など体の営みによって常に熱が産生されますが、同時に、生命活動を維持していくために異常な体温上昇を抑えるための、効率的な調節機構も備わっています。
 暑い時には、自律神経を介して末梢血管が拡張します。そのため皮膚に多くの血液が分布し、外気への「熱伝導」による体温低下を図ることができます。また同様に自律神経の働きで汗をたくさんかく(発汗により体内の水分や塩分が出ていきます)ことにより、その蒸発に伴って熱(気化熱)が奪われ、体温の低下が図られます。
 環境変化(周囲の温度や湿度の上昇や大気の対流(風)の変化)に対して、私たちの体が適切に対処できなければ、筋肉のこむらがえりや失神(いわゆる脳貧血:脳への血流が一時的に減少する現象)を起こします。そして、熱の産生と熱の放散とのバランスが崩れてしまえば、体熱放散ができずに、著しく体温が上昇し、水分や塩分の喪失が起こり、生体失調に至ります。このような一連の状態全体が熱中症です。 

※熱中症はどのようにしておこるのか

 

 熱中症を引き起こす条件

環境

からだ

行動

・気温が高い

・湿度が高い

・風が弱い

・日差しが強い

・閉め切った室内

・エアコンがない

・急に暑くなった日

・熱波の襲来

・高齢者、乳幼児、肥満

・持病(心臓病、糖尿病、精神

 疾患、広範囲の皮膚病など)

・低栄養状態

・脱水状態(下痢、インフルエンザなど)

・体調不良

  (寝不足、二日酔いなど)

・激しい運動

・慣れない運動

・長時間の屋外作業

・水分補給が困難


※熱中症はどのような場所でなりやすいか
 高温、多湿、風が弱い、輻射源(熱を発生するもと)があるなどの環境では体から外気への熱放散が減少し、汗の蒸発も不十分となり、熱中症が発生しやすくなります。
 熱中症は、夏の強い日射しの下で激しい運動や作業をする時だけでなく、身体が暑さに慣れない梅雨明けの時期にも起こります。また屋外だけでなく、高温多湿の室内で過ごしている時にもみられます。
 
※どのような人がなりやすいか
 脱水状態にある人、高齢者、肥満の人、過度の衣服を着ている人、普段から運動をしていない人、暑さに慣れていない人、病気の人、体調の悪い人。 

※熱中症の重症度・緊急度 熱中症はI度、II度、III度に分類されます。
 また症状から 熱失神・熱痙攣、熱疲労、熱射病に分類されます。
  


熱中症の症状と重症度分類

分類 症状 症状からみた診断
Ⅰ度
 
軽症度
四肢や腹筋などに痛みをともなった痙攣
(腹痛がみられることもある)
 ○多量の発汗の中、水(塩分などの電解質が入っていない)のみを補給した場合に、起こりやすいとされている。
 ○全身の痙攣は(この段階では)みられない。
失神(数秒間程度なもの)
 ○失神の他に、脈拍が速く弱い状態になる、呼吸回数の増加、顔色が悪くなる、唇がしびれる、めまい、などが見られることがある。
 ○運動をやめた直後に起こることが多いとされている。
 ○運動中にあった筋肉によるポンプ作用が運動を急に止めると、 止まってしまうことにより、一時的に脳への血流が減ること、また、長時間、あつい中での活動のため、末梢血管が広がり、相対的に 全身への血液量が減少を起こすことによる。
熱ストレス
(総称)
熱けいれん
 
 
熱失神
 
 
 
 
 
 
 
 
Ⅱ度
 
中等度
めまい感、疲労感、虚脱感、頭重感(頭痛)、失神、吐き気、嘔吐などのいくつかの症状が重なり合って起こる
 ○血圧の低下、頻脈(脈の速い状態)、皮膚の蒼白、多量の発汗などのショック症状が見られる。
 ○脱水と塩分などの電解質が失われて、末梢の循環が悪くなり、極度の脱力状態となる。
 ○放置あるいは誤った判断を行なえば重症化し、Ⅲ度へ移行する危険性がある。
熱疲労
(熱ひはい)
Ⅲ度
 
重傷度
Ⅱ度の症状に加え、意識障害、おかしな言動や行動、過呼吸、重篤なショック症状などが起こる
 ○自己温度調節機能の破錠による中枢神経系を含めた全身の多臓器障害。
 ○重篤で、体内の血液が凝固し、脳、肺、肝臓、腎臓などの全身の臓器の障害を生じる多臓器不全となり、死亡に至る危険性が高い。
熱射病


※熱中症になったときには
 熱中症にはさまざまな症状があります。めまいやふらつきなど熱中症の初期症状に気付いたらすぐ休むべきですが、もともと体調が悪いために頭痛や倦怠感を感じている方は、熱中症になっていても気付かないことがあります。また熱で意識がもうろうとしてきて、自分の状態を判断できないまま急に意識を失う場合もあります。
 万が一熱中症が起きてしまった時には、適切に応急処置をする必要がありますが、以下の点を観察しひとつでも当てはまれば、すぐ医療機関に連れて行きましょう。
         ・ 本人の意識がはっきりしていない
         ・ 自分で水分や塩分(ナトリウム)が摂取できない
         ・ 症状がよくならない

        

熱中症の対処法

※ 予防には  日傘
 外出時には、帽子や日傘を忘れずに、炎天下での長時間の活動は避け、日陰を利用しましょう。 
また、室内で過ごすときにも、風通しを良好に保ったり、エアコンや扇風機を使用したりして室温と湿度を調整するように注意して過ごしましょう。いずれの環境下でも、こまめな水分補給や必要な塩分の補給を心がけましょう。 


※ 異常の発生 熱中症を疑ったとき  クーラー
  ・ 涼しい場所へ移動 : 風通しのよい日陰、クーラーの効いている室内へ。 
  ・ 衣服をゆるめ、身体を冷やす : 熱を身体の外に逃がします。
  ・ 症状から状態を判断し、以下の適切な対策をとりましょう。


※ 熱けいれん: 筋肉痛、手足がつる、筋肉がけいれんする  水分補給

 生理食塩水(0.9%の食塩水;1ℓの水に9gの食塩水)を補給すれば通常は回復します。 


※ 熱失神、熱疲労: めまい、全身倦怠感、悪心・嘔吐、頭痛
 涼しい場所に運び、衣服をゆるめて寝かせ、水分を補給すれば通常は回復します。0.1~0.2%の食塩水やイオン飲料、経口補水液を補給します。

※ 熱射病: 体温が高い、意識障害、呼びかけや刺激への反応がにぶい、言動が不自然、ふらつく 
 死の危険のある緊急事態です。集中治療のできる病院へ一刻も早く運ぶ必要があります。また、いかに早く体温を下げて意識を回復させるかが予後を左右するので、身体を冷やすなど現場での処置が重要です。
 熱射病が疑われる場合には、直ちに全身に水をかけたり、濡れタオルを当てたり扇いだりして身体を冷やします。nettyuusyou
また、首すじ、脇の下、大腿部の付け根などの大きい血管を水やアイスパックで冷やす方法も効果的です。足を高くし、手足を末梢から中心部に向けてマッサージするのも有効です。吐き気やおう吐などで水分補給ができない場合には病院に運び、点滴を受ける必要があります。 
 回復しないときにはすぐに救急車を要請し、病院に搬送します。
 
 
※ 回復した場合も、容態が急変することがあるので、念のため病院で診察を受けておきましょう。
 
 近年、増加している熱中症ですが、症状が深刻なときは命に関わることもある重大な疾患です。病態や救急処置など
正しい知識があれば熱中症を予防することや、熱中症患者を救うこともできます。熱中症を知り、自分でできる熱中症対策を心がけ、これからの暑い季節も安全に、快適に過ごしましょう。