腹腔鏡手術についてこのページを印刷する - 腹腔鏡手術について

2015年4月21日掲載


単孔式手術では臍を2cm程度切開します
 みなさん、腹腔鏡手術ってご存じですか?最近某大学病院での事故のため怖い手術と感じていらっしゃるかもしれません。やっと三輪車に乗れるようになったお子さんを突然自転車に乗せたら転んでしまうのは当たり前です。でも自転車は大変便利な道具ですよね。使い方を間違えなければ病気を治すために避けられない手術を少しでも楽に受けることができるのです。
 デメリットばかりがマスコミで報じられてしまっていますがメリットは何なのでしょう? まっさきに思いつくのは傷が小さく美しく痛みが少ないということでしょうか?それも正解です。しかしまだまだメリットがあるのです。少しご紹介しましょう。

  1. 出血が少ない(炭酸ガスでお腹を膨らまし、お腹の中の圧力が高まるため出血が少なくなります。出血を押し戻すイメージです)
  2. 手術のあとの腸閉塞が起こりにくい(傷が小さいため癒着が少ないため腸閉塞が起こりにくくなります)
  3. 精密な手術ができる(カメラで拡大しながら行うので開腹手術より精密な手術が可能です。カメラの先端は自由に曲げられるため奥の方まで観察ができます)
  4. 入院費用が安くなることがある(退院までの期間が短い分入院費用が安くなることがあります。手術料金は高いので逆の場合もあります)

臍にプロテクターを装着します
 これまでは早期癌の方のみが腹腔鏡手術の適応とされてきたのですが技術が進歩し、腹腔鏡手術に慣れた病院では進行癌にも行われるようになってきています。精密な手術が得意な腹腔鏡手術のメリットが活かされるのです。
 さて、では当院の外科における腹腔鏡手術をご紹介させていただきます。虫垂炎や胆石の治療には単孔式腹腔鏡手術を行っています。これは傷がお臍だけというものです。お臍はお腹の中心にありますよね。そのためお臍から様々な場所の手術が可能なんです。太った方でもお臍には脂肪がついていませんのでここを利用しない手はありません。術後の痛みも軽く皆さんに喜んでいただいています。最近では一部の大腸癌治療にもお臍のみの手術を行っております。
 その他大腸癌、胃癌の多くは腹腔鏡手術で治療を行っており、残念ながら術後に抗癌剤治療が必要とされた方でも術後の体力の回復が早いため早期に治療を始めることができ高い治療効果が期待できるのです。

臍から手術を行っている様子です
 また当院の特徴はなんといっても肝臓癌にも腹腔鏡手術が可能ということです。消化器外科の手術の中でも肝臓の手術はやはり特殊なものであり開腹手術での多くの経験があるからこそ安全に腹腔鏡手術を行うことができるのです。
 肝臓は非常に出血しやすい臓器ですが炭酸ガスで腹腔内に圧力をかけながら手術をすることで出血量を減らすことができるメリットが活かされるのです。また肝臓を背中から剥がしてくる必要も殆ど無いため術後にお腹に水がたまったり(腹水)もしにくくなります。
 多くのメリットがある腹腔鏡手術ですが、慣れないと危険な場面もあります。例えば視野が狭い点が挙げられます。気づかないうちに別な臓器を損傷してしまったりする可能性もあります。デメリットをしっかり理解しメリットを活かすためには細心の注意とともに多くの経験を積むしかありません。我々はたった3人の外科チームですが常に同じメンバーでやることによりメンバー間の意思疎通が高まり良い治療ができると考えています。腹腔鏡手術はあくまで手段であり、目的はより体への負担が少なく病気を根治に導くことなんです。
 当院外科では毎年春に行われる山梨総合医学会において腹腔鏡手術に関する演題を昨年は5演題、今年も4演題と最多の演題を発表し日々研鑽に努め、皆さんによりよい治療を提供できるように努力を続けております。毎日腹腔鏡手術に関する相談を受け付けておりますので何なりとご相談ください。 

腹腔鏡手術4     外来チーム
 

(左)手術終了後の臍の様子です。手術直後でこの程度ですが日ごとに元に戻ります。 (右)左から鈴木部長、浅川医長、高橋医師。